旧戸井町、現在の函館市の地名で、今では町名と岬名になっています。古くは「汐くび」とか「塩くひ」などと文献に見られます。
『北海道蝦夷語地名解』では、シリ ポㇰの項として、
山下 和人汐首ト訛ル
永田方正『初版 北海道蝦夷語地名解 復刻版』(草風館、1984年)176頁
とあり、sir-pok シㇽ・ポㇰで山・の下の意味になります。今は岬名にもなっていますが、pok(~の下)とあるので本来は山の下の所を指しています。
シㇽ・ポㇰがシオ・クビに訛ったとはにわかに信じがたいですが、道内に同じような地名は無いのかと、『北海道蝦夷語地名解』を探してみます。
すると、日高國幌泉郡(旧幌泉町、現えりも町)に同じシリ ポㇰの地名がありました。
シリ ポㇰ アブラコ澗 「シリポク」ハ魚名、和名「アイナメ」方言「アブラコ」ト云フ此魚多シ故ニ名ク今油駒村ト稱ス
永田方正『初版 北海道蝦夷語地名解 復刻版』(草風館、1984年)176頁
「シリポㇰ」の意味をアブラコ澗としています。ありゃ (*´Д`)
立待岬のところでもありましたが、意味ではなく説明を書いてしまう永田地名解特有の誤りですね。
ざっくり訳すと、「シリポクは、アイナメ(アブラコ)が一杯いるのでアブラコ澗という名前が付いた。今は油駒村と称す。」あたりでしょうか。
本来シリポクの訳で山の下と書いてから、現在の名称アブラコ澗を取り上げて、その名前の由来を説明するべきでしたね。
その油駒をグーグルマップで見てみると、
これは汐首岬下と同じようなところに位置していますね。
山というか岬の西側に位置していているので、もしかしたら、下と言う意味よりも(陽の)影のようなニュアンスも含まれるのでしょうか。
汐首岬は対岸の青森県からもっと近く約17.5kmの距離となっています。本州ともっとも近い場所であったり、旧戸井線のコンクリートアーチ橋や汐首灯台、汐首砲台跡があったりと、隠れた名所となっています。