道南厚沢部町に当路(とうろ)という地名があります。その由来はもちろんアイヌ語と言われていますが、『角川日本地名大辞典』から引用すると、
(前略)地名は、アイヌ語で沼が群をなしているところとか、湿地帯の多いところの意であるトロに由来するとされる(アイヌ語地名解)(後略)
竹内理三編『角川日本地名大辞典 1 北海道 上巻』(角川書店、1987年)939頁
とあります。残念ながら、『北海道蝦夷語地名解』には収載されてないので、他の本を探してみました。更科源蔵氏の『アイヌ語地名解』にも、
厚沢部町中流の水田地帯。釧路標茶町の塘路と同じ、ト・オロで沼のところの意
更科源蔵『アイヌ語地名解 更科源蔵著著作集Ⅵ』(みやま書房 、1982年)20頁
とあって同じような意味になっています。
そのまま解釈すると、to-oro ですが、同母音の重出を避けるアイヌ語の特性でoが一つ欠落し、toroとなります。なのでト(トー)・オロ→ト(トー)ロになります。沼(湖)・の所(中)という意味になります。実際厚沢部町当路グーグルマップで見てみましょう。
思ったほど、沼も湖もありません。標茶町の塘路地図も見てみます。
見事に湖の横ですね。湖も沼も何もない厚沢部町の当路地名由来には少し疑義が残ります。ちなみにすぐ近くの字中館の周辺だと小さな沼なのかため池なのかが散在しているので、そんな風な感じがしないわけでもありませんが・・・。
もしかしたら、当路付近にも同じような光景が広がっていたものが、田んぼを作る過程で沼や湿地を干拓していったのかもしれません。それにしても過去の図面をみるなど検証が必要なようです。
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