ちょうど、北斗市方面から中山峠を越え、厚沢部町の中心部を通って江差方面へ向かうとこの地名に行き合います。漢字を見るといかにも日本語的なのですが、やはりアイヌ語由来であるらしく『永田地名解』には、
伏木戸(村)ノ原名「アツサブ」川破裂シテ川口トナルヿ屢コレアリ故ニ名クト云フ
永田方正『初版 北海道蝦夷語地名解 復刻版』(草風館、1984年)169頁
とあり、厚沢部川の河口氾濫から名付けられた地名と言えます。『角川日本地名大辞典』には、
地名の由来は、アイヌ語で、古くからある沼とか、とり残った沼の意のフシコトによるとされる。
竹内理三編『角川日本地名大辞典 1 北海道 上巻』(角川書店、1987年)1287頁
と書かれているので、どちらも河川の氾濫による地名のようです。フシコトは husko-to フㇱコ・トで 古くある・沼 でしょうか。河川氾濫が終息したあとの沼や水の残った場所を指したのかもしれません。山田秀三氏は、
プㇱは擬音語で、ぷすと破れることをいう。厚沢部川の古川には、今でも海浜に沿って、ずっと伏木戸近くまで残っている。昔は風雨の際に川口が砂で塞がると、今の古川を流れ下り、伏木戸の辺で砂浜を破り、そこで海に注ぐこともあったので、push-putu(プㇱと破る・川口)と呼ばれ、地名として残ったのであろう。
山田秀三『北海道の地名』(北海道新聞社 1984年)441頁
文章だけだとなかなか想像が難しいですが、国土地理院の地図を見ると、山田氏が指摘するような状態になっています。しばしば河口氾濫があったのでこの地名が付いたのでしょう。