道南のお土産の定番に『五勝手屋羊羹』というものがあります。赤い細長い筒状の棒の中に入っていてその羊羹を底から押し出しながら押し出した分を先端についてある糸で巻いて切って食べるという代物です。羊羹の美味しさもさることながら、ちょっと出しては切って食べるという行為が妙にはまって大好きでありました。 屋号の五勝手屋という音の「ごかって」イメージから、「かってにくえ!」的な印象を持ち、ずいぶん上から目線な羊羹だなと。まあ、変わった食べ方するしそんなもんかなあと子供ながらに思っていました。(笑)
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店の名前は確かに五勝手屋なのですが、その五勝手は地名からくるものだと知ったのはいつだったでしょうか。川や村の名前として存在していましたが、『角川日本地名大辞典』には、
檜山地方南部、五勝手川(武者見川ともういう)流域。地名の由来は、アイヌ語で、波を突き出す所とか、波のくだける所という意のコカイテによるという。
竹内理三編『角川日本地名大辞典 1 北海道 上巻』(角川書店、1987年)539頁
とあり、アイヌ語の可能性があるようです。
『角川日本地名大辞典』の記述を素直に受け取れば、koy-kay-pe 波・折れる・もの、あるいはもっとしっくりくるのは koy-kay-te(-i) 波・折れ・させる(・もの)で者や所を表す「i」が省略された形かもしれません。波を突き出すだとか、波のくだけるとか一体なんのこと?と思いますが五勝手川にはそんな流れもありません。国土地理院の地図を見てみると現在の五勝手川の南側に相泊岬という地名があります。
もう少しグーグルマップで見てみましょう。
相泊(あいとまり)という名称からあい(北風)が起きた時に舟を留める場所であると想像できます。現在の相泊岬の漁港、五勝手漁港は北向きにありますので北風をもろに受ける構造になってますので自信を持っていえませんが、この掘り込み港ができるまでは北風の吹く時、この岬の南側に舟を停泊させたのではないでしょうか。
地図で見ると一目瞭然ですが、相泊岬の先端の海中には大きな扁磐があり、干潮時などは大きく波よけになることでしょう。想像するに、koy-kay-te(-i)コイカイテ→コカイテ→五勝手は「波を折れさせるもの」として、停泊中の舟を波から守った相泊岬とその先端にある大きな扁磐を指して言ったアイヌ語ではないでしょうか。