静狩(しずかり)の地名由来

静狩漁港 地名
静狩漁港
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函館方面から国道37号線を海岸沿いに長万部方面へ抜けていくと、37号線は左に曲がり静狩峠へ向かいますが、真っ直ぐというかやや右に反れながら静狩市街に入っていく道があります。

静狩市街を真っ直ぐいくと右手に漁港が見えて行き止まりとなります。長万部方面からだだっ広い土地が続き、道路が永遠に続くような直線があるのですから、山に阻まれると本当に行き止まり感があります。『角川日本地名大辞典』には静狩について、

古くはシヅカリ・志津狩・静雁とも書いた。渡島地方北部、内浦湾(噴火湾)沿岸の静狩川流域。地名はアイヌ語のシリツカリ(地の端の意)に由来する(蝦夷地名考幷里程記)

竹内理三編『角川日本地名大辞典 1 北海道 上巻』(角川書店、1987年)647頁

上原熊次郎の『蝦夷地名考幷里程記』が引用されされているので見てみますと、スツカリの項として、

夷語スッツ゚カリなり。シリツ゚カリの略語にて、則、地の端と譯す。扨、シリとは地と申事。ツ゚カリとは端し又は、前へと申事にて、此所山と濱との端しなる故、此名あり。且、是よりレプンケ山中にて甚難所なり。(後略)

上原熊次郎「蝦夷地名考幷里程記」(山田秀三監修、佐々木利和編『アイヌ語地名資料集成』草風館、1988年)48頁

意訳すると、「アイヌ語スッツ゚カリ。シリツ゚カリの略語で、地の端と訳します。さて、シリは地といい、ツ゚カリは端または、前と申し、この所、山と浜との端であるからこの名がある」といった感じでしょうか。

これを見ると、当時の人々は「シズカリ」を「スッツ゚カリ」と呼んでいたことがわかりますし、今でも訛ってるじっちゃんばっちゃんは普通にシがスになりますよね。多分今も「スッツ゚カリ」になっていると思います。(笑) この地名はシリツ゚カリが本来の地名ということで、最後に山田秀三氏の著書を引用すると、

長万部町内の地名。長万部から砂浜伝いに北行すると、礼文の山塊に突き当たり、海岸の通行ができなくなる。そこがシㇼ・トゥカリ(shir-tukari 山の・手前)で、続けて呼ぶとシットゥカリ(shittukari)と発音され、それに静狩と当て字された。

山田秀三『北海道の地名』(北海道新聞社、1984年)413頁

sir-tukari→sittukari シㇽ・ト゚カリ→シット゚カリ(山の・手前)になったのでしょう。rがtの前に来るとtに変化するという音韻変化で木古内の札苅と同じ変化ですね。確かに山の手前としか言いようがない地形になっています。

本当に山で行き止まりです
本当に山で行き止まりです

ちなみに、青森県下北郡東通村に尻労という地名があります。

古くは志利労とも書いたようです。読みにくい地名ですがこれで「しつかり」と読みます。「しかり」や「しっかり」とも言ったそうです。尻がつかれるれるとはよく当てたものです。(笑) この尻労も青森の下北半島の尻屋岬で行き止まりになる地名で、北海道の静狩と同じ意味の地名になります。

道南と津軽海峡を挟んだ青森、やっぱりアイヌ人は海を簡単に渡ってたんですかね。同じ意味の地名でも、矢越や母衣月と同じく静狩を見ても北海道の方がはるかにスケールはでかいなあと思います。暇があったら青森の尻労にも行ってみたいと思いますので、行ったら追記したいと思います。

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