江差町の地名由来

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江差町は檜山地方南部の町名ですが、その由来については諸説あります。『角川日本地名大辞典』から引用していくと、

地名の由来は、アイヌ語で「尖く出た崎」という意のエシャシによる説(蝦夷地名考幷里程記)、昆布を意味するエサシによる説(北海道蝦夷語地名解)が古くから一般的であったが、「悪い砦」という意のウエンチャシからの転訛である(ユーカラ研究)という説が出され、最近では後者の説が有力である(江差町史5)。

竹内理三編『角川日本地名大辞典 1 北海道 上巻』(角川書店、1987年)208頁

とありますが、「尖く出た崎」の解釈である『蝦夷地名考幷里程記』を詳しく見てみると

夷語エシヤシなり。則、尖く出たる崎といふ事。此崎海岸へ出て澗内になる故、地名になす哉。未詳。

上原熊次郎「蝦夷地名考幷里程記」(山田秀三監修 佐々木利和編『アイヌ語地名資料集成』草風館、1988年)88-89頁

未詳とあるので、上原熊次郎氏も由来についてはよくわかってなかったようです。エサシとして昆布を意味する『北海道蝦夷語地名解』も詳しく見てみると、

「エサシ」ト云ヒ「サシ」ト云フ並ニ昆布ノ義ナリ北見國枝幸モ亦昆布ノ義ナリ然レトモ岬ヲ「エサシ」ト云フヿアリ故ニ舊地名解ニ「エサシ」ハ山崎ノ義トアルハ誤ニアラス二説並ニ行ハル

永田方正『初版 北海道蝦夷語地名解 復刻版』(草風館、1984年)169頁

やはり、二説並べてあり自信が無さそうです。「サシ」は昆布の意味で北見の枝幸も同様ですと書いている前半は、松浦武四郎の『蝦夷地名奈留邊志』と同じ解説です。後半、「エサシ」は山崎すなはち岬であると書いています。『角川日本地名大辞典』の著者は何故前者の意味だけとりあげたのか・・・二説並べた永田方正氏の意思をスルーしてます。

繁二郎浜から鷗島を望む
繁次郎浜から鷗島を望む

『ユーカラ研究』から取り上げられたウェン・チャㇱ 悪くなる(ある)・砦(館、柵)とありますが、 ウェン・チャㇱ →エサシと転訛するのか・・・ウ音を無視すればそう聞こえないこともないですね。この説なら、鷗島や津花岬のあたりを指し示すのでしょうか。近くに蝦夷館とよばれたチャシもありますので、その辺も考えてみなければいけないかもしれません。では、何が「ウェン」なのか?『地名アイヌ語小辞典』には、嶮岨な場所、交通困難な場所、飲用にならない水、何か事故があった不吉な場所などを示すとあり、考えられるのは何か不吉なこと(疫病が流行った、誰かに不幸なことがあったなど)があった砦かもしれませんが、これはもうわかりようもありません。ただ、昔から中心部は津花岬周辺にあり「ウェン」なところなら廃れていてもいいような感じがします・・・。さらに、山田秀三氏の著書をみると、

(前略)江差を「昆布」とする説と「岬」とする説が従来行われたが、知里真志保博士は、北海道南部では、昆布をサシとはいわないとして昆布説を否定し、またエサシを「エ・サ・ウシ・イ(e-sa-ush-i 頭を・浜に・つけている・者)。つまり岬」と分析して説明した。古い上原熊次郎も、ただ出崎と書いていた。北見の枝幸もこの江差も同地形である。従来檜山江差、北見枝幸と呼んで区別されていた。

山田秀三『北海道の地名』(北海道新聞社 1984年)440頁

ここに述べられている知里真志保氏の e-sa-us-i 頭を・浜に・つけている・者 が地形的にもぴったりする感じがします。江差の山手から海に降りてくると現在も「中歌」という浜を指し示す地名が残っていますし、浜に突き出した岬を表現するにはピッタリな感じがします。そうすると「津花」がその岬の先の方、海側に限定されて地名で残っているのも納得できそうです。

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