『菅江真澄遊覧記』は著者である菅江真澄が江戸時代に東北や蝦夷地での旅や逗留し見聞きしたものを詳細に書き記した日記を5冊の本にまとめたものです。
この宮本常一・内田武志翻訳は、資料として価値のある文章が現代文訳にされており、詳細な研究と解説が成されているので菅江真澄を全くしらない人でも楽しめる読み物になっています。
江戸時代後半の東北の生活や文化も興味深いですが、筆者は道南にいて地名などを調べていますと、この菅江真澄の残した北海道の記述を興味深く読んでしまいます。当時の松前藩や道南の様子、アイヌの風俗など、この本を片手に同じルートを廻るとなかなか楽しくて面白いです。
すごいのはその観察眼で、見たものや体験したものを事細かに記してあります。ああ、当時はこんなだったんかな、と当時の様子を思い描くことができます。
道南に関する記述は、「えみしのさえき(蝦夷喧辞弁)」「えぞのてぶり(蝦夷風俗)」「ひろめかり(昆布刈)」です。
「ひろめかり」の上巻は現存していませんし、「ひろめかり」はこの本には所収されていません。
道南の様子やアイヌ語地名を調べたい方なら、「えみしのさえき」と「えぞのてぶり」を所収している2巻をおすすめします。そこから興味を持ったら、東北の生活や文化へ足を踏み入れるのもありですね。同じ2巻に所収されている「外が浜づたひ」には津軽半島にいたエゾ(おそらくアイヌ)の話も出てくるので、この辺も東北蝦夷やアイヌに興味があればかなり面白いです。
全5巻、東洋文庫だけでなく、近年平凡社ライブラリーでも刊行されています。民俗学に関心を持つ人でしたら興味を持って読める本ですね。是非おすすめします。(‘ω’)
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