地球岬(ちきゅうみさき)の眺望と地名由来

地球岬 地名
地球岬
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先日、道東に行く用事がありその途中で室蘭の地球岬に立ち寄りました。

絵鞆(室蘭)半島の名所ですね。

筆者、室蘭の中では好きな場所の一つです。

室蘭は函館よりもずっとアイヌ語由来地名が多いです。

ちなみに絵鞆半島の絵鞆、その由来を引用していきますと上原地名考にはエトモの項として、

夷語エンルムなり。則、砂崎といふ事。此所砂崎なれは、地名になすといふ。扨、此邊帆立貝の名産なりといふ。

上原熊次郎「蝦夷地名考幷里程記」(山田秀三監修、佐々木利和編『アイヌ語地名資料集成』草風館、1988年)50頁

砂崎と訳していますが、その根拠はちょっと不明です。  

永田地名解には、エンルㇺ、鼠の項として、

江鞆土人ハ鼠ヲ「エンルㇺ」ト稱ス土人云フ此灣内鼠多シ故ニ名ク岬ノ名ニアラズト然レトモ※鼠ハ「エルム」ニシテ「エンルㇺ」ニアラズ且ツ北海道中凡ソ「エンルㇺ」ト稱スル處數個所アリ皆岬ノ義ナリ獨リ江鞆土人ノミ岬ニアラズトハ不通ノ説ト云フベシ况ンヤ有珠虻田土人ハ江鞆ノ岬ヲ指シテ「エンルㇺ」ト呼ブヲヤ

※筆者注「トモ」は合字

永田方正『初版 北海道蝦夷語地名解 復刻版』(草風館、1984年)219頁

ざっくり意訳すると、

「絵鞆のアイヌ人は鼠を「エンルㇺ」という。この湾内に鼠が多いので名付ける。岬の名前ではないと。しかし、鼠は「エルム(erum)」であって「エンルㇺ」ではない。かつ北海道では凡そ「エンルㇺ」と称する所は数か所あって皆岬の意味である。ひとり絵鞆アイヌのみ岬ではないとは不通の説というべき。どうして(絵鞆近隣の)有珠虻田のアイヌ人は絵鞆の岬を指して「エンルㇺ(鼠)」と呼ぶだろうか(呼ばない)。」

と鼠説を一蹴しています。だったら、訳語の項名も「鼠」ではなく「岬」にしたら良いのにと思ってしまします。(笑)

絵鞆半島はもともとはアイヌ語でen-rum エン・ルㇺで、突き出している(尖っている)・頭=岬という意味です。襟裳岬の由来と一緒ですね。「岬」を意味するアイヌ語は色々ありますが、ただのちょっとした岬ではなく、全体が半島として突き出していますので、その辺にエン・ルㇺというニュアンスが込められているのかもしれません。永田氏が指摘するように少なくとも鼠ではないと思います。

地名由来板
地名由来板

地名由来板の名勝ピㇼカノカも当然アイヌ語になりますので、pirka-nokaでピㇽカ・ノカ、美しくある・形です。さあ、前置きが長くなりましたが、岬を紹介していきます。

この日は近くの道の駅に車中泊したあと、早朝の6時過ぎに地球岬を訪れました。

昼間に来ると売店も開いているのですが、この日は早朝であったので閉店中です。もしかしたらコロナの影響で昼間も閉まったままかもしれませんが・・・。

地球岬駐車場の売店
地球岬駐車場の売店
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絵鞆半島マップ
絵鞆半島マップ

地球岬というだけあって地球型のモニュメントが置かれてあります。

地球型のモニュメント
地球型のモニュメント
チキウ岬灯台掲示板
チキウ岬灯台掲示板
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地球岬にはチキウ岬灯台があります。

日本の灯台50選に選ばれています。

チキウ岬灯台表札
チキウ岬灯台表札

いよいよ地球岬展望台へ上っていきます。

天気が不安な日でしたが、朝日は見られそうですね。

地球岬展望台へ
地球岬展望台へ
地球岬展望台
地球岬展望台
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地球岬掲示板
地球岬掲示板

展望台に上ると地球岬の地名由来掲示板がありましたが、残念ながら右端の方が見えなくなっています。ここは山田秀三氏の地球岬の項を見てみます。

室蘭半島の南東端、灯台のある大崖岬の名。旧図にホロチケウエ、ホンチケウエと大小の岬が書かれているが、そのホロ(poro 大きい)の方がチケウエである。永田地名解は「チケウェ。秘する処」と書いているが、どうしてそんな意味になるのか分からない。知里博士は「チケㇷ゚ chi-ke-p(自分を・削った・者。→削れたもの。つまり断崖絶壁)が元来の形で、それがchikewと訛り、それを三人称の形にしてチケウェ(その断崖)と呼んだのか」と書かれた。とにかく訛った地名らしい。

山田秀三『北海道の地名』(北海道新聞社 1984年)398頁

ポロ・チケㇷ゚のチケㇷ゚→チケウェ→チケウ→チキウに訛って「地球」という字が当てられたのですね。噴火湾を一望できるパノラマは正に地球を見渡しているようで、なかなか上手い当て字をしたものです。ネーミングって本当に重要ですね

これがチケウェ岬だったらインパクトが無くなってしまい観光名所にならなかったでしょう。

山田氏の記述の中に「永田地名解」が出ていますが「秘密にする処」という引用があります。なんのこっちゃちょっと気になるので原文を見てみると、ポロ チケウェー 大ニ秘スル處(大いに秘する処)の項として、

「チケウェー」ハ守リテ人ヲ寄セ付ヌヿナリ此處鉛アリ故ニ秘シタリト云

永田方正『初版 北海道蝦夷語地名解 復刻版』(草風館、1984年)216頁

ざっくり意訳すると、

「チケウェーは守りて人を寄せ付けぬことである。この所鉛あり、ゆえに秘したりと云う。 」

永田地名解ってこういう訳わかんない説明というか解釈がたまにあるから、知里博士に全くの「迷著」とか言われちゃうんだろうなあ。(´Д`) 同じくポン・チケウェーなんて「稍秘密にする処」と訳されていますから、これでは知里博士も怒っちゃいますわ。(笑)

鉛があるのかはわかりませんが、山田氏の言うように永田氏のチケウェーは意味不明です。

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さて、地名の話はこの辺にしておき地球岬から望む朝日を紹介して終わりにしましょう。

地球岬から望む朝日
地球岬から望む朝日

早起きしたかいがありました。非常に綺麗な朝日を堪能できました。

この日は風が強かったですが、それほど波もなく噴火湾を見ることができました。残念ながら鯨とかは見かけなかったですね。

展望台の一番上には幸福の鐘があります。

地元の老婦人がその鐘を撞いて朝日に手を合わせ祈りを捧げておりました。この方の毎日の日課なのでしょう。非常に心に残る印象的なワンシーンでした。

今度時間があれば絵鞆半島のアイヌ語地名を散策したいですね。

皆さまも室蘭を訪問した際は地球岬に足を運んではいかがですか。(‘ω’)

幸福の鐘を鳴らす老婦人
幸福の鐘を鳴らす老婦人

チキウ岬灯台
チキウ岬灯台

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