知里真志保『和人は舟を食う』(北海道出版企画センター、2000年)

知里真志保『和人は舟を食う』 書籍
知里真志保『和人は舟を食う』
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北海道出版企画センターから2000年に発売された本ですが、その表題を見ると「えっ、なんで日本人は舟を食べるの?」とちょっとドキッとしてしまします。この本は「知里真志保著作集」未収録の論稿を集め一冊としたものの表題ですが、その中の論稿の一つが本の表題になったのです。それは昭和22年の『続随筆北海道』に掲載されたもので、「和人は舟を食う」(当時の書き方では「和人わ舟お食う」)です。

ちょっとアイヌ語を勉強したことがある人なら、表題を見てすぐに「ああ、なるほどね」と思うのですが、全く知らない人が聞くと「え?何?」と思うことでしょう。

知里先生の本に従えば、魚のことをアイヌはchiep(チエㇷ゚)また詰めてchep(チェㇷ゚)というらしい。厳密には、チエㇷ゚は一般の魚であり、チェㇷ゚は鮭に限るそうです。chiep は chi-e-pで「我らが・食う・物」の義で魚を主食とした時代があったことを示唆しているようです。

それでは本題に戻って、支笏湖の名産品にチップと呼ばれる魚がいます。ヒメマスという魚ですが、サケ目サケ科の淡水魚の一種で、湖沼残留型のものを指します(降海型はベニザケという)。そのチップですが、チップをアイヌ語で表すとchipであり、これはアイヌ語で舟を意味します。さあ、もうお気づきと思いますが、このことに対して本文を引用すると、

はじめに述べた通り、アイヌわ魚のことお、「チえㇷ゚」またわ「ちェㇷ゚」と言う。そしてそれわ本来鮭のことであった。和人わこれお「チップ」などと訛る。学者の中にさえ、そぉ書く人がある。(中略)「チㇷ゚」chipと言えばアイヌ語では舟のことである。いかにアイヌでも舟だけは食わなかった!舟を喰ったり砂利を喰ったりしたのわ、資本主義はなやかなりし頃の日本人である。

知里真志保『和人は舟を食う』(北海道出版企画センター、2000年)70-71頁

アイヌは舟だけは「食」わなかったと、日本人の舟を「喰」ったりとあえて「くう」という漢字を替えて表現しているのは知里博士なりの皮肉なのかもしれません。他にもいろいろな話が所収されてありますので興味があったら読んでみて下さいね。

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